ロードバイクのブレーキ ②ディスクブレーキ編
前回に引き続き、ブレーキの話、今回は2回目、ディスクブレーキ編です。ディスクブレーキの歴史を振り返るとともに、その未来を考えてみたいと思います。最後に、ICANブランドの新製品AERO50軽量ディスクホイールもご紹介しますので、お楽しみに。
ディスクブレーキの歴史
ディスクブレーキは、まず、クルマ用に開発されました。最初期に導入された有名なクルマは、ジャガーのサルーンでした。1955年のことです。他車に比べて効きが良すぎて追突される危険があるので、わざわざ後ろにディスクブレーキ表示を付けたほどでした。
自転車用のディスクブレーキは約30年前に開発されていました。最初に採り入れたのMTB(マウンテンバイク)でした。泥水を浴びるMTBにとって、ディスクブレーキは最適でした。こうして約20年前にはMTBなどのエンデュランス系に広く行きわたっています。
しかし、ロードバイクへのディスクの導入はごく最近のことです。リムブレーキの完成度が高く、あえてディスクを採用する理由がなかったからです。この状況が崩れたのは、ホイールのカーボン化でした。カーボンはリムブレーキの熱に弱く、雨天の効きもアルミホイールに比べて頼りないものだったからです。こうして、リムブレーキに代わるものとして、ようやくディスクブレーキがクローズアップされて来たのです。
ディスクブレーキのメリット・デメリット
ディスクブレーキには、油圧式とワイヤ式がありますが、主流は油圧です。現在、シマノでは下から、ティアグラ、105、アルテグラ、デュラエースのコンポーネントにディスクを用意していますが、すべて油圧です。
よく言われるメリットは、
- 軽い力で制御でき、結果的に安全マージンが高い
- 雨天時の効きに影響が少ない
- ブレーキ熱がホイールに与える悪影響がない
- リムブレーキのようにリムが削れてゆく心配がない
といったところでしょう。
さらに加えると、
- 従来のクイックレリーズでなく、スルーアクスルを採用したことにより、取り付けの剛性、確実性が増す
- 車体の下半分にディスク装置が付くことにより重心が低くなる
- 自転車の設計の自由度が増す
設計の自由度が増す、ということはどんどん新しい発想のバイクが登場する可能性が期待できる、ということなのです。
デメリットもあげておかないと不公平です。
- 重量増になる
- 扱いに注意が要求される (タイヤの付け外し、輪行時、ブレーキ液交換時など)
- リムブレーキより価格が高い
さらに、細かいところをつつくと、
- 擦過音や制動音の調整が必要になることがある
- 整備性に不安が残る (気泡の問題、ホースコネクター等がフレーム内装に入らないことがある、メーカーの仕様変更が多いなど)
次の章では、これらのメリット・デメリットを総合して考えてみたいと思います。
ロードバイクブレーキのこれから
前章のメリット・デメリットを総合すると、あることに気が付きます。メリットでは、ディスクブレーキという装置の素性の良さがたくさん表れています。これに対し、デメリットは、技術的な進化で改善される余地のあるポイントばかりだということです。
この状況から、ロードバイク用のディスクブレーキはすばらしい可能性があるとともに、まだ開発途上にあるのでは、という疑問がわいてきます。
しかし、ここに、ひとつの回答があります。ロードバイクの完成車を見渡してみましょう。すると、現在では、ひとつのモデルにリム/ディスク両方を用意するメーカーが増えてきていることに気が付きます。ほんの数年前には考えられなかった出来事です。
確かにロードバイクのディスク化は始まったばかりですが、ディスクユニットの完成度も上がってきており、現在の時点で、すでに自転車メーカーは 「GO」 のサインを出しているのです。我々ICANも同じ結論に達しており、製品ラインアップをご覧いただければおわかりのように、ディスクブレーキ装備・対応はかなりの割合になっています。
今後もディスクブレーキの進化は続きますが、いつまでも待っている必要はありません。現在のロードバイクは実に多様な選択肢があり、こんな面白い状況はなかなかあり得ないといえます。
ディスクブレーキ用 ICAN AERO50ホイールのご紹介
前回のリムブレーキでもご紹介しました、ICAN AERO50にはディスクブレーキ用ホイールもあります。前後合わせて1430gという軽量さを、79,620円(税込)で実現した意欲的なモデルです。
youtubeに動画をアップしています。
ICAN AERO50ホイールの詳細は、以下の記事をご覧ください。
また、製品スペックについてはこちらのaero50ディスクでご覧になれます。
まとめ
いかがだったでしょう。当たり前の結論にはなりましたが、世の趨勢はディスクブレーキに傾きつつあるようです。特に、悪条件下でたくさん走る人ほどディスクブレーキを支持するケースが多いことも申し添えておきます。
これに対するリムブレーキは完全に守りの体制ですが、前回お話した通り、こちらの良さというものは依然としてあり、あえてリムブレーキを選ぶ、という選択肢も尊重したいものです。いずれにしても、自転車業界は激しい技術革新の時期を迎えており、今後新しいコンセプトの製品がたくさん登場することでしょう。面白い時代に生きているバイク乗りとして、お互いに喜びを分かち合いたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。