AERO 007エアロカーボンフレームについて語る
今回は、当社のベストセラーカーボンフレーム、AERO 007をご紹介します。
低価格のエアロカーボンフレームではバツグンの出来の良さを誇るこのモデル、実に基本に忠実に設計されており、デザインも破綻のないものです。
当社独自の技術は随所に見られますが、企業秘密に触れない程度に(笑)、その詳細をご覧にいれます。
AERO 007 エアロカーボンフレームについて
リーズナブルな価格で最高のパフォーマンスを実現させるべく送り出されたAero007、社内にも愛用者の多い、愛すべきフレームです。
重量は、フレーム単体で1140g、フォーク390g、トータル1530gと軽量です。
一見してわかるのは、必要部分にたっぷりのボリューム感が感じられることですが、それは剛性・強度を確保した上でのエアロ形状の証です。
各パイプは直線基調となっていますが、その理由は後ほどご説明します。
今回は、フレーム各部について、何故そのような設計をしているのか、お話しします。
あなたのフレームに対する見方がアップグレードするかもしれません。
フレーム各部から、ロードバイクの基本を知る
ご存じとは思いますが、まず、フレーム各部の名称のおさらいをしましょう。
そして、あらためてAero007フレームを見ると、基本に忠実でマジメな設計がなされていることに気付くことでしょう。
各パイプがカーブを付けず直線基調なのは、剛性への配慮からです。フレームのカーブは、たわみを持たせたい時に有効ですが、007フレームでは、パイプ断面形状や太さ、肉厚加減などによって、たわみを設計しています。
こういった、自由な設計が出来るのがカーボン材料の良い点です。肉厚ひとつとっても、連続して同じ個所というのは驚くほど少ないのです。
材料となるカーボン繊維にはグレードがあります。当社は、TorayT700とT800を使用しています。これ以外にもさらに高価なカーボン繊維はありますが、高級なものが必ずしも良いというわけではありません。コストの高い高弾性繊維は硬いですが、強度がありません。自転車には、T700とT800が最適、というわけです。
007フレームには、T700が使用されています。
では、次に、まずフレーム中心部の三角形のパイプから見ていきましょう。
①メインフレームの説明
トップチューブ
中心部は薄く、両端は力がかかるので肉厚なバテット構造になっています。アルミフレームなどでも、高級なものはダブルバテットやトリプルバテット構造になっていますが、カーボンフレームではもっと複雑なバテット構造が可能です。
さらに、前方になるほどハンドルから強い応力を受けるため、断面も前方が太くなっています。
また、全体に横に幅広いのは上下でなく左右に強い力を受けるのと、乗り心地を考えてのことです。
前方に行くにしたがってパイプにエッジが付いているのもデザイン・空力と強度を考えてのことです。
トップチューブがスローピング(後ろが低い)しているのは、全体の剛性に有利に働くからですが、重心を下げる効果もあります。
ヘッドチューブ
Aero007のヘッド部はかなりタフなエアロ形状をしていることに気が付くと思います。
そして、基本に忠実に、下部が肉厚なテーパード形状をしています。
この部分の剛性の持たせ方により、ハンドリングに大きな違いが生じます。
設計思想は、ズバリ、シャープなハンドリング。
フロントフォークの項と合わせてお読みいただければ、Aero007の大体の設計思想がお分かりいただけると思います。
ダウンチューブ
ダウンチューブは、すべてのフレームパーツの中で一番太い部分です。ご察しのとおり、一番力を受け止める部分だからです。
面白いのは、前方のヘッド部分が縦に平たいのに対し、BB(ボトムブラケット)側は横に平たくなっていることです。ヘッド側はハンドルの押し引きの力を縦に受け、BB側はペダリングの左右の力を受けるのです。もちろん、エアロ形状であることは言うまでもありません。
ところで、カーボンフレームはほとんどがワイヤー内臓式になっています。これは、エアロ効果と共に、ルックスの良さを考慮したものです。
とはいえ、自分でバイクを組むとき、この配線が結構やっかいなものです。ICANでもこの点には苦慮しており、出来るだけ組みやすい形状に造ってあることをお伝えしておきます。
シートチューブ
シートチューブにかかる力も複雑です。前後左右、さらにねじれの力が加わることから、ここは真円断面にしたいところですが、エアロ形状を意識して楕円断面を採用しています。
さらに、エアロ形状を保ちながら、トップチューブとの接合にはがっしりとしたラグを設けています。スタイリング上、ここを多少ふくらませてもライダーで隠れてしまうのでOKという意図はあります(笑)
これでメインフレームの3本のパイプ+ヘッドの説明はおしまいです。
次は、サブフレームであるリアの三角部分とフロントフォークの説明です。
②サブフレームの説明
シートチューブ
シートポスト部分からリアハブに向かって伸びるのがシートチューブです。
ご覧のとおり、他の部分に比べるとずいぶん細いです。これは、担う応力が比較的少ないことと、しなりをつくる部分だからです。乗り心地を良くするためです。ここがカーブしているフレームもあるほどです。
シートチューブ上部がメインフレームに接続する部分、ここにゴツい補強がしてあること
はすでに触れましたが、その接続箇所が若干下寄りであることにも気付くはずです。こうして、リアの三角形を小さくする設計が流行っていますが、その理由はおわかりでしょうか。
正解は、リアの剛性アップのためです。
また、エアロ効果を考えた位置決めであることももちろんです。
チェーンステー
BBからリアハブに伸びる部分です。ここも複雑な応力を受けるところです。縦・横の応力についてはすでにご明察のとおりですが、さらに、もう一つ別の力が加わります。
それは、チェーンリングが右に付いていることと関係があります。
右に力が偏りやすいのです。
Aero007の写真でお解りのように、ここは縦に平べったい断面をしています。
これは、エアロ形状であるとともに、幅の狭いスペースに太く丈夫なパイプを使いたいための策ともいえます。
フロントフォーク
最後はフロントフォークです。ご覧の通り、ここは風の抵抗を大きく受ける部分のため、平べったいエアロ形状をしています。そして、ほとんどストレート形状をしています。それはなぜでしょうか。最後のクイズです。
それは、ベントしたフォークよりもストレートフォークの方が剛性が高いためです。
この部分の剛性の高さは、ハンドリングに直接関係します。ヘッドチューブのところでお話したように、剛性が高い方がクイックなハンドリングが得られるのです。
まとめ
辛抱強くお付き合いいただき有難うございました。
できるだけ、専門性を避けた記述を心がけましたが、いかがだったでしょうか。
Aero007のオーソドックスでオールラウンドな特徴がおわかりいただけたとともに、ご自分のバイクのフレームの形状にも思いを馳せることが出来たのではないでしょうか。
同時に、カーボンフレームは、必要な箇所には充分な強度を、応力を受けない部分は出来るだけ軽量化を、というマニアックな設計であることがおわかりいただけたと思います。
ですから、取り扱いには細心の注意を持って!
ICANからのお願いです。
〈参考記事〉
ICAN AERO40カーボンホイール Jonny Pinkさんの熱いインプレ!