ロードバイクはディスクブレーキ化されてどう変わったか?
ロードバイクの進化が止まりません。
この進化の中心的役割を果しているのがディスクブレーキだと言っていいでしょう。
すでに、完成車の主流はディスクブレーキに移っています。
このあたりで、あらためてディスクブレーキについて考えてみたいと思います。
1 ロードバイクはディスクブレーキ化されてどう変わったか?
まず、ブレーキのディスク化がロードバイク全体にどのような変化をもたらしているかについて考えてみたいと思います。
① ワイドリム・ワイドタイヤ化
近年、タイヤのワイド化が進んでいます。これに伴うリムもワイド化の傾向にあります。キャリパーブレーキ仕様ではC17の太さが中心でしたが、ディスク仕様ではC19~C21まで拡げて来ています。
その背景のひとつには、ディスク化によりブレーキトラックの必要がなくなり、そこで得られたリムの軽量化を、多少の重量増となるもののワイド化に振れることがあげられます。
とはいえ、これは、リムに限っての話。スポークの増加、ハブ/ローター部の重量増などを考えると、ディスクが重量的に不利なのは事実です。
② スポークパターンの変化
リムを掴んで止めるリムブレーキから、軸を掴んで止めるディスクに変わり、スポークパターンに強度が要求されるようになりました。特に前輪は、従来のラジアル組(スポークが交差しない組み方)では、ストッピングパワーを受け止められなくなりました。スポークの本数も増加しています。
③ カーボンホイールとの関係
カーボンホイールとリムブレーキの相性については、利きの点、耐熱の点、ブレーキトラックが削れる点などで、多少の不安要素がありました。ディスク化により、これらの問題点が解消したことも、ディスク化が急速に進んだ要因と考えられます。
④ 走行パターンの変化
ブレーキを多用する下りでのコントロール性が向上したことにより、下りを思い切って攻める走りが出来るようになったことは、大きなメリットでしょう。
ディスクは雨・泥の影響を受けにくく、悪天候での走破性が向上したこともうれしい点です。
⑤ 左右対称リム化
後ろのホイールは、スプロケットのスペースの関係で、左右のスポークが非対称に組まれています(オチョコ量の差といいます)。それに応じ、リムまでも左右非対称に設計された凝ったものが散見されていました。ところが、スプロケットの反対側にディスクスペースが加わることにより、非対称が少し緩和され、リムも左右対称のものが多くなる傾向にあります。
⑥ その他の変化
クイックリリースからスルーアクスルに変わったことにより車軸の剛性がアップしたことも走りに影響しています。ブレーキングの感触が変わったことによる操作の変化もあります。
2 ロードバイクのディスクブレーキ化で違和感の出てきた点
ディスクブレーキを導入してみると、これはまだまだかな、と思える部分も見つかります。慣れにより解消出来る部分が多いとはいえ、今後の進化にも期待したいと思います。
① 音鳴りの問題
ダンシング時などに、シャンシャンと音が出ることがあります。ローターの熱変形によるパッドとの接触が一因とされています。これは、ローターのセンターにパッドが当たるように調整することである程度解決できますが、ダイナミックなフレームのゆがみに繊細なディスクが音を上げるような印象があり、あまり気持ちの良いものではありません。
② ブレーキタッチの問題
利きは抜群のディスクブレーキですが、繊細なコントロール性においてはリムブレーキに一日の長があり、いまだに論議を呼ぶところです。
③ ホイール脱着時の問題
適正な脱着を行なえば問題はないのですが、リムブレーキのようなラフな扱いには耐えられないことは、その都度気付かされます。(次章でもう一度触れます)
④ 輪行時の問題
脱着に加え、ディスク面の保護、パッド間へのスペーサー挿入など色々と気遣いの多いことが輪行時にクローズアップされてしまいます。ディスク/リム2台持ちのサイクリストは、輪行時にリムブレーキの方を選んでしまう、というのはよく聞く話です。
3 ディスクブレーキの扱いで注意すべき点
① スルーアクスルの規格
ホイール固定の規格は統一されつつありますが、スルーアクスルの規格はまちまちです。
単体で組む場合、原則としてフレームに付属するものを使用しますが、付属していない場合もありますので購入時の確認が必要です。
② やけど問題
言わずと知れた、走行直後のローターの熱によるやけどです。わかっていてもチューブ交換時など何かの拍子に触れることがあり注意が必要です。また、熱したローターに水をかけることは変形の原因になります。
③ ホイール交換時
ローターでキャリパーや台座を傷つけないようにしながら、左右のパッド間に正しくローターが入ってきているか注意深く行わないといけません。後輪はチェーンのテンションがかかっていると交換時にミスを犯しやすいので、ギアをトップにし、フロントのチェーンリングからチェーンを外すなどの配慮が必要です。装着後はローターの位置が微妙にずれることがあり、再調整をしておくことをおすすめします。
④ 輪行時
前章で触れた通りです。細心の気遣いが必要です。出先で組み立てようとして、ローターの変形に気付いても後の祭りです。ホイールごとカバーをかけておくことはよい対策になります。
⑤ 掃除時
掃除の時にパッドとローターの減りを確認しておきます。パッドの汚れはカラ拭き程度に、ローターも油分は絶対禁物、手の油もダメで、接触面には触れないようにします。
万一、ローターに油分が付着したら、中性洗剤で注意深く洗い流します。
この話は、次の章に続きます。
4 ディスクブレーキのメンテナンス
① 大前提
ブレーキ関係は油分がNGです。次のようなうっかりケースがよくあります。
- チェーンなど、ブレーキ周辺のパーツにスプレー式オイルを吹く (ブレーキに付着する) ✕
- ローターを手で触る ✕
- パーツクリーナーを使ってしまう (油分が入っている) ✕
- 汚れたウエスでブレーキパーツをさわる ✕
② 自分でできるメンテナンス
ディスクのメンテナンスは慣れない作業が多いため、くれぐれも慎重に。
- ローター増し締め ネジ式の場合は、ひとつ締めたら次は180度反対側のネジを絞めてゆく
- パッド・ローター交換 慎重にやれば可能 簡単な専用工具が必要
- ローターゆがみ修正 わずかなゆがみは手で修正可能、直接触ることはNG
- キャリパーのセンター出し キャリパー固定ネジをゆるめ、ブレーキレバーを握り、その状態でネジを締めなおす(ディスクローターセンタリングツールを使う方法もある)
- ブレーキレバー調整 ブラケットカバー内のネジで調整
大体この程度までは自分でできる範囲だと思います。
ブレーキオイルの交換を伴う作業に関しては、相当研究した後でないと難しいかもしれません。
5 最後に
シマノから、ついに新型デュラエースR9200が発売になりました。同時にアルテグラR8100系も発売になり、業界を騒がせています。
ディスクブレーキに関しても、ここにシマノの解答が用意されています。「ディスクは効きが良いがコントロール性はリムが上」 と言われていたものから、かなりの改善が見られたようです。これは、レースシーンでのディスク化への最後の一押しになる可能性があります。
ICANも、これからのディスクブレーキ状況を楽しみに見守りたいと思います。Ⓗ