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新型デュラエースR9200登場で見えてきたトレンド

による nicole hu 06 Sep 2021 0 コメント

長い間噂となっていた新型デュラエースがついに登場しました。

業界的にも話題となっており、すでに数多くのメディアが詳細を紹介しています。

見どころはたくさんありますし、意外だった点もいくつかは散見されます。

ここでは、ICANスタッフが特に注目した3点についてクローズアップしてみたいと思います。

 

1、新型デュラエースの概要

まず、その概要を簡単にあげておきます。

  • セミワイヤレス電動変速: ワイヤレス化に慎重だったシマノは、電動システムの前半分をワイヤレス化し、R9200系全機種にDi2を採用しました。変速スピードの短縮化が焦点です。シマノならではの操作の確実性と合わせて、業界を一歩リードしたと言えるでしょう。
  • デュアルコントロールレバー: 操作系も洗練されましたが、エアロポジションを考慮した内向きの形状が話題になっています。ショップに完成車が出回れば、これを握りたがる人が後を絶たないことでしょう。
  • 12速への多段化、変速装置の高性能化: 現在のレース事情が端的にあらわれていて、興味の尽きない内容となっています。詳しくは後述します。
  • ディスクブレーキの洗練化: 従来の不満点がかなり解消された内容です。まさにトレンドをリードしているといえるでしょう。
  • ケーブル類のスリム化: 地味な改良ですが、バイクの製作側からみると、このあたりも非常に気になる点です。
  • 新しいホイールのラインアップ: スペックと共にその価格にも注目です。

 

他にも挙げるべき点は多数ありますが、この中で、ICANが今回特に注目したのは、12速化、ディスクブレーキの進化、そしてホイールです。

まず、12速化から話をすすめましょう。

 

2、12速化とギア比

ライバルであるスラム、カンパニョーロとも、シマノに先立って12速化を達成していました。したがって、デュラエースの12速化は時間の問題でした。デュラエースと、ライバル達のギアリングの内容を比べれば、現在のレースシーンが見えてきます。キーワードは「高速化」でしょうか。

 

まず、各社のギア構成を見てみましょう。

シマノ (新デュラエース) 

   フロント 50‐34T  52‐36T  54‐40T

     リア   11-30T  11・12・13・14・15・16・17・19・21・24・27・30

         11‐34T  11・12・13・14・15・17・19・21・24・27・30・34

 

スラム (RED) 

     フロント 46‐33T 48‐35T 50‐37T

  リア   10‐26T  10・11・12・13・14・15・16・17・19・21・23・26

       10‐28T  10・11・12・13・14・15・16・17・19・21・24・28

       10‐33T  10・11・12・13・14・15・17・19・21・24・28・33

 

カンパニョーロ (スーパーレコード)

      フロント 50‐34T 52‐36T 53‐39T

  リア   11‐29T  11・12・13・14・15・16・17・19・21・23・26・29

       11-32T  11・12・13・14・15・16・17・19・22・25・28・32

               11-34T  11・12・13・14・15・16・17・19・22・25・29・34

 

シマノの新デュラエースは、リアのスプロケットの組合せはたった2種類。クロースレシオを選ぶか、登りに強い軽いギアを選ぶかの2択です。

 

しかし、なんといっても注目すべきはトップギヤです。

通常、フロント53T、リア11Tというのが最速のギアでした。これを組み合わせるとギア比で4.81になります。

ライバルのスラムは、違う方法をとりました。リアのギアを今よりも小さくすれば、フロントギアも小さく出來、ギア比を高められることに加え、ギアの軽量化にもなると考えたのです。リア10T、フロント50Tというのがスラムの解答でした。得られたギア比は5.0と従来の組合せを上回るものでした。

 

ところが、実際のレース現場では面白いことが起きました。スラムのフロントギアを50Tで使うのではなく、52T、53Tで使用するケースが多かったのです。これだとギア比は5.3という最強の数字となります。アマチュアライダーではとても使いこなせないほどの重さです。

 

では、シマノも今回のリニューアルでリアの歯数を10Tにしたかというと、そうではありませんでした。リアは11Tという従来のまま、フロントに54Tという大きなギアを持って来たのです。大きなギアほどなめらかであり、エネルギーロスが少ないという点を重視した結果だといえます。しかし、ギア比は4.90にとどまります。これでさえ、アマチュアの手に負えるものではありませんが、実際のレースでのアドバンテージはどうでしょう。単なるスペックでは判断できない領域です。注意深く見守りたいと思います。

 

余談ながら、クランク長も従来は最短が165㎜であったのに対し、160㎜をラインアップしました。これは、クランク上死点を低くすると、無理のない前傾姿勢をとれることに気付いたライダーが多くなったということです。従来から、ひそかに短いクランクを使うレーシングチームがあるとささやかれていたことにも呼応します。それはクランク長の違いがレース結果に影響するという事実に他ならないのかも知れません。

 ディスクブレーキ

3、ディスクブレーキ

ディスクブレーキに関する従来からの問題点は色々指摘されており、いわば発展途上の技術です。とはいえ、そのポテンシャルの高さから、瞬く間に普及した、というのが現在の状況です。新型デュラエースはこの「問題点」に真っ向から取り組むことでディスクブレーキの未来を垣間見せてくれたといえるでしょう。次の4点が主なものです。

 

① ブレーキ鳴りの改善

ダンシング時にフレームがしなり、ディスクブレーキシステム全体がそれにつれてわずかにゆがむことから、ローターがシャンシャンと鳴ることがありました。また、ブレーキ多用時に、ローターが熱膨張で変形しパッドに当たり、これも鳴りの原因でした。

 

この対策として、パッドクリアランスを従来より10%広くするとともに、ローターの熱変形を最大66%抑える材質の工夫がなされています。

 

② コントロール性の進化

ディスクブレーキはパフォーマンスの高さと引き換えにコントロール性の不自然さを甘受しなければなりませんでした。ブレークスルーがいつかはやって来る、と思いながら、です。

どうやら、デュラエースがやってくれたようです!

 

パッドの移動スピードを上手にコントロールする機構を得たことで、なめらかな制動感を得ることができるようになりました。これは間違いなく他のメーカー、他のモデルに影響を与えることでしょう。

 

③ キャリパーボディの進化

キャリパーボディの軽量化・小型化と高剛性化のため、2ピースだったものを1ピースのモノボディに変更しています。ディスクブレーキの軽量化は求められていた課題だっただけに、今後につながるこの進化は期待が持てます。

 

④ メンテナンス性の向上

ブリーディング用のブリードボスとネジを別体としたことで、車載時のメンテナンス性が大幅に向上しています。ただし、シマノお決まりの、旧モデルの方式からの継承性の欠如はこのあたりにも見え隠れしており、悩ましいところです。

 

【参考記事】

ロードバイクのディスクブレーキを語る

 

4、ホイール

ICANとしては、デュラエースホイールのその価格に注目していました。

リムハイトは36、50、60がありますが、すべてF 107,690円、R 125,840円です。

価格は下がりましたが、セットで233,530円と、やはり高価です。

スペックは大幅にアップし、ICANに近いレベルにまで追い付いています。

エアロホイール

 ★ICANホイールとの比較

ICANのフラッグシップモデル、DT‐AEROシリーズのカーボンホイールと比べてみましょう。

これは、ハブにDT SwissのDT240S/DT350S、スポークにSapim CX‐RAYという定評のある高級パーツを使用しており、精度、重量ともデュラエースとほぼ互角です。2年間の保証が付いています。もちろんUCI認証品です。

 

気になる価格ですが、

DT AERO35ディスク  35㎜ハイトモデル 前後セット 93,525円

DT AERO50ディスク  50㎜ハイトモデル 前後セット 96,788円

DT AERO55ディスク  55㎜ハイトモデル 前後セット 98,963円

となっています。

さて、あなたならどちらを選ぶでしょう?

【ICANホイール公式HP】

 

5、最後に

新型デュラエース、派手に目を惹くモデルチェンジではありませんでしたが、実に真面目に進化を遂げてくれ、しっかりとトレンドセッターの役割を果してくれたことを嬉しく思います。

今回はとりあげませんでしたが、同時にアルテグラもほぼ同様の進化を見せ、ファンを喜ばせてくれています。むしろ、こちらの方が現実的な関心の対象といえるかもしれません。

ICANは、皆さんと共に、これらの進化を楽しんで見守り続けたいと思います。Ⓗ

 

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