カーボンスポーク・ホイールの素材と強度の秘密

「カーボンスポーク・ホイール」と言えば、その名の通り、カーボンのスポークとカーボンのリムを使ったホイールです。

 

通常のスポークは、スチール(鉄)、ステンレス、アルミがあるようです。

珍しいところでは、チタンやナイロン樹脂などもあるとの事です。

 

そして、話題のカーボン製のスポークも存在していて、リム、スポーク共にカーボン製のものをカーボンスポーク・ホイールと呼びます。

 

特にロード業界は、「カーボン最強」という風潮があるので、当然たくさんありそうなのですが、探してみると意外と種類は少ないです。

今回は少しマニアックですが、素材についての情報をできるだけ分かりやすくお知らせします。

 

カーボンの軽さは魅力

物の軽さを考えるとき、「軽い」とか「重い」とか言うのは、割と感覚的です。

「鉄100gと羽毛100gだとどちらが重い?」と聞くと、何割かの人は「鉄」と答えるほどです。

前提として、どちらも100gと指定しているので、重さは同じです。

羽毛の方は100g集めようとしたら、かなりの量になりそうですね。

鉄と羽毛は何が違うかというと、「比重」が違います。

 

「同じ大きさ、形にしたときにどれくらい重たいか」数値にしたのが比重です。

上記の材質の比重を記載してみます。

 

  • 各材質の比重(g/㎤)

鉄:7.87

ステンレス:7.6~8.1

アルミニウム:2.7

チタン:4.51

ナイロン:1.07-1.09

カーボン(炭素):2.25

 

これだけ見せられても何も感じないのが普通です。

筆者は機械設計者でもあるので、少し分かりやすく解説させていただきます。

鉄とアルミニウムを比較すると、鉄の方が、数値が約3倍大きいのが分かります。

つまり、全く同じ形状の自転車フレームを作ったとしたら、鉄とアルミでは、アルミフレームは鉄の1/3の重さで作ることが出来るのです。

 

鉄フレームが7.87kgだとしたら、アルミフレームは、2.7kgです。

 

ステンレスの比重は7.6~8.1と多少の差があるのは、合金だからです。

鉄とクロムなど複数の金属を混ぜ合わせています。

鉄の割合が多いので、鉄に近い比重なのですが、さびにくくしている分、軽くなっています。

 

そこで、今回の主役である「カーボン」を見ると、比重は2.25です。

ICANが使用している東レのT700やT800の比重は1.8と更に軽いです。

 

つまり、鉄とカーボンで同じ形状の自転車フレームを作ったとしたら、ざっくり言うと1/4以下の重さで作れてしまうのです。

 

鉄フレームが7.87kgだとしたら、カーボンフレームは1.8kgです。

圧倒的に軽いのが分かります。

軽ければいいというものではない

上記の素材を考えると、ナイロンが一番軽いので、全てナイロンで作ったらいいと思いますが、ナイロンはプラスチックです。

プラスチックのフレームだとちょっとぶつけただけで割れてしまうのは容易にわかりますよね。

 

そこで必要になるのが「強度」です。

一般的に素材を引っ張って、どこまでの力に耐えられるのかの数値が「引張強度」です。

この数値をもとに、曲がりやすさや折れやすさを算出しています。

各素材ごとの数値を見てみましょう。

 

  • 各材質の引張強度(MPa)

鉄(SS400):400

ステンレス(SUS304):505

アルミニウム合金:600

チタン合金:1250

ナイロン:78

カーボン(炭素):1240

 

「Mpa」という単位については専門的すぎるので、ここではスルーして問題ありません。

 

数値だけ見ればOKです。

鉄とナイロンを比較すると、約1/6しか強度がないことが分かります。

そして、カーボンを見ると、1240Mpaと鉄の3倍も強いことが分かります。

 

ちなみに、ICANが使用している東レのT700やT800だと引張強度は5000Mpa前後あります。

鉄もアルミも純鉄、純アルミニウムが一般的な製品に使われることはまずありません。

必ず、何かしらの混ぜ物がされて強く、さびにくく、された合金が使われます。

 

カーボンも純カーボンだと引張強度は1240Mpaですが、素材メーカーの研究と創意工夫により、4500~5500Mpaまで高められているのです。

東レは日本のメーカーですので、日本の技術はこんなところでも活かされているのですね。

 

これらを比較したら分かるように、数字だけ見てもカーボンはすごい素材だと分かります。

だから注目されているのですね。

 

しなやかさも必要

そんなにカーボンが良いのならば、ビルでも車でもカーボンで作ったらいいという極論になってしまいますが、実際は世の中そうはなっていません。

 

その理由の一つは「しなやかさ」です。

「粘さ」と言ってもいいでしょう。

鉄やアルミのスポークを考えてみると、手で「ぐぐっ」と曲げていくと、くの字に曲がります。

 

ところが、ナイロンやカーボンの場合、ほとんど曲がらないのですが、一定以上の力をくわえた時にポキリ折れてしまいます。

 

その特性を示すのが「靭性」です。

用途ごとに適した素材というものがあります。

 

どの素材が全てにおいて100点で、他は0点という極端なことはなく、自分の使い方や希望を考えると、「鉄が良い」とか「アルミが良い」とか「カーボンが良い」とか決まってきます。

 

カーボンは値段が高価

カーボンの敷居の高さの一つに価格があります。

鉄は比較的安価な素材ですが、ステンレス、アルミニウムは高価です。

さらに高価なのがカーボンです。

 

そして、加工のしやすさは製品としての価格に直結します。

ICANのカーボンスポーク・ホイールは全て手作業だとご存じでしたか?

こんなに手がかかっていたら、当然ある程度の価格になるのは避けられません。

ただ、それだけ品質はいいのです。

こんな風に制作風景が見られるのは、自分が乗っている自転車がどのように作られているのか分かって安心ですよね。

 

まとめ

カーボンスポークがアリかナシかを筆者的に考えると、ロードバイクに関して言えば「アリ」だと思います。

とにかく軽さを求める場合、カーボンは鉄の1/4以下の重さで、強度は10倍以上あります。

飛行機の羽根の素材に採用されるなど効果は大きいです。

 

ただ、強い衝撃には弱いのでBMXのように高いところから着地するような使い方には適していません。

全てのケースに対して100点の素材など存在しないのです。

 

ただ、日本の舗装道路を走る程度の凹凸ならば、全く問題ないのでロードバイクについて考えるとカーボンスポーク・ホイールは「アリ」なのです。

軽くて強いなんて最高の素材だと思います。

全てが手作業というのもロマンがあります。

 

外部ライター:奥野 晃一

  • Nov 26, 2021
  • カテゴリー: News
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