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カーボンフレームとアルミフレームの強度はどちらが強いか

による nicole hu 20 Dec 2021 0 コメント

世の中には、カーボンフレームとアルミフレームの強度は、どちらが強いかという論争があるようです。

 

ただ、中身を見ると正しい情報と間違った情報が混在しています。

この記事の筆者は、自転車ではないけれど、機械設計者です。

そのため、基本的な材料についての知識があり、設計の失敗についても多くの経験があります。

 

その筆者が、カーボンフレームとアルミフレームの強度について嘘と本当を暴露したいと思います。

一番多く市場に出ているであろう、鉄フレームもついでに考慮しますので、参考にしていただければ幸いです。

▲ICAN ロードバイクフレームカーボン製

 

純粋な素材は実用的ではない

まず最初に知っておくべきは、「鉄」とか「アルミ」とか「カーボン」とか言いますが、純粋な(単一な)素材は一般の方はまず目にすることはありません。

 

まずは「鉄」ですが、自転車によく使われているのは、クロムモリブデン鋼という素材です。

鉄に、クロムとモリブデンという素材を溶け込ませた「合金」です。

鉄には違いなのですが、合金のことを「鋼(はがね)」と呼びます。

 

自転車業界では、「クロモリ」と呼ばれている物です。

鉄単体よりも優れた特性を持っています。

 

クロムが含まれる合金としては、ステンレスが有名ですが、錆びにくくなるほどは含まれておらず、材質の強化のためにクロムは使われています。

材料業界では「SCM」と呼ばれますが、同じクロモリでも筆者が知っているだけで11種類あります。

 

「比較した」という場合、どれとどれを比較したのかは、とても重要なので、「鉄とアルミ」みたいなざっくりとした情報の場合、あまり信ぴょう性は高くないと考えた方が良いでしょう。

「SCM 415(クロモリ)とA7075(超々ジュラルミン)を比較した」などの具体的な情報は信ぴょう性が高いです。

 

次に、アルミですが、これも必ず合金で使用します。

1000番台から8000番台まであり、アルミニウムをベースとして、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)など、色々な金属の合金です。

 

2000番台は溶接しやすいので、ステムなどに使われているはずです。

フレーム周りは、コストと耐久性を考えて6000番台、軽量が売りの自転車のシリーズだと高価だけど7000番台などが使われているでしょう。

 

最後にカーボンですが、これも単体では使いません。

一般的に自転車に使われるカーボンと言うのは、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)であり、日本語にすると「炭素繊維強化プラスチック」となります。

炭素部分も重要なのですが、プラスチック部分も重要で、一口にカーボンと言っても、値段も強度もピンきりなのです。

▲ICAN ロードバイクカーボンフレーム

 

ICANで使われている「カーボン」は、日本メーカー東レの「カーボンファイバー東レT700/T800」が100%使われています。

信用のおける素材メーカーの素材である必要があるので、これは世界最高ランクの素材と言っていいでしょう。

 

フレームの製造過程はYouTubeで公開されているので、一度ご覧になると驚かれると思います。

手作業でここまでやっているのです。

 

全く同じ形状で比較することはない

鉄、アルミ、カーボンで全く同じ形状のフレームを作ることは100%あり得ません。

また、作っても意味がないです。

 

それぞれに材質としての特徴が違うのに、全く同じ形状を作るはずがないのです。

溶接できない素材を溶接しようとしないでしょうし、鉄とカーボンでは強度が3倍も違うのに同じ形にしたら、カーボンが強すぎるます。

 

だから、全く同じ形状での比較実験は、世界中のサイトを見ても見つけられませんでした。

普通の実験は、メーカーが発売しているフレームについて比較するものが主流です。

 

溶接部はメーカーにより差が出る

「鉄フレーム」と代表的なフレームは存在しません。

それは、メーカーによって技術力や製造方法が異なるからです。

 

自転車のフレームの耐久試験の研究結果などを見ていると、破損するのは大体以下の部分です。

 

  • 特徴的な部分が破損する

細くなっていたり、急な角度で曲がっているなど、特徴的な部分で破損が起きやすいようです。

 

  • 違う材質同士の溶接

普通はやらないのですが、鉄とステンレス、鉄とアルミの溶接をしているような部分は折れやすいです。

 

鉄の溶接は一般的で安心感がありますが、アルミニウムの溶接はかなり難しいので、溶接部分が折れることがあります。

その難しさをお知らせしようとしたら、本が1冊かけてしまうくらいの量があるのですが、当記事の本道から外れるので、ここでは割愛させていただきます。

 

  • ボトルケージのねじ穴

フレームにボトルホルダー固定用のねじ穴が開いていますよね?

あそこで折れるパターンもあるようです。

 

  • デザイン性重視による応力集中

ビジネスにおいて、デザインはとても重要です。

かっこよくないと売れません。

ただ、かっこよすぎて応力が集中して、そこが弱くなっている場合もあるようです。

 

■少ないがテストしたデータは存在する

自転車のフレームのテストとして、各メーカーのフレームを買って、「鉄」「アルミ」「カーボン」で比較したデータは存在します。

 

許可をいただいていませんので、直接のリンクは控えさせていただきますが、ドイツの雑誌に掲載された「EFBe(Engineering for Bikes)」の実験などはとても有益だと思います。

 

体重85kgの人がフレームにスタンディング(立ち漕ぎ)を想定した負荷(122kg)を機械的に10万回与え続けた時のフレームの歪みを記録しています。

同社では、フレームに最も負荷がかかるのはスタンディング(立ち漕ぎ)と考えているようです。

 

この結果から、素材に関係なく、優れたフレームは10万回に耐え、ダメなものはどこかが破損していました。

このテストで各素材の評価は以下でした。

 

鉄フレーム・・・軽量ではないが、魅力的な価格でリーズナブルな耐久性

アルミフレーム・・・非常に硬く、軽く、非常に耐久性がある

カーボンフレーム・・・最も耐久性がある。実験で最も軽いフレーム。

 

これが結論です。

 

上記の実験では、2万時間の使用を想定している様でした。

1日8時間立ち漕ぎし続けて、約7年の計算です。

プロのレーサーでもこんな無茶な使い方はしないでしょう。

 

一般人が使うとしたら、どれを選んでもすぐに破損するようなものではありません。

ただ、信用のおけるメーカー、信用のおけるお店で買う必要はあると思います。

 

やはり筆者としては、お財布が許すのならば、カーボンフレームに挑戦したくなってしまいました。

▲ICAN ロードバイクカーボンフレーム

 

外部ライター:奥野 晃一

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