「自転車にセオリーなし」が東京オリンピックで数学者によって証明される
色々ありますが、2021年東京オリンピックが開催されました。
自転車の記事を書かせてもらっている筆者としては、オリンピックといえども自転車が気になります。
通常ならば筆者は人にはあまり興味がなく、純粋に自転車に興味があります。
オリンピックに出るような世界最高峰の選手はどこのメーカーの自転車に乗っているのかとか、そんなパーツをどんなふうに調整しているのかなど、動画を何度も見て研究するのです。
ただ、今回のオリンピックでは人に注目せざるを得ないことが起きました。
「自転車レース・ロード・女子」の競技で無名の選手が金メダルを獲得したのです。
しかも、彼女は自転車を始めてまだ7年、そして、数学者と言う特殊な経歴を持っています。
彼女の計算なのか、世界の強豪選手はゴールしても自分が2位だと知らなかったのだとか。
1位と思って喜び勇んでゴールしたのに、その後2位と知らされて空気が凍る場面もありました。
それだけではなく、この初出場の数学者、アナ・キーゼンホファーは色々と自転車レースのセオリーから外れたことをした上で、金メダルを獲得していますので、どれくらい常識外れなのか振り返ってみましょう。
ペース配分をしない
オリンピックのレースは137km走られた。
137kmと言えば、東京から富士山くらいまでは行ってしまう距離です。
普通はペース配分をするものです。
ところが、キーゼンホファーさんはスタートから2kmで全力疾走します。
もちろん、他の選手もいたのですが、段々ペースが落ちてきて、ロードのセオリーともいうべき「集団」が出来てきます。
「集団」はペースを作っていき、その「集団」から外れることは「負け」を意味します。
最初に飛ばしていた人たちも、段々ペースが落ちていき「集団」に飲まれ集団の一員となっていきます。
この時、キーゼンホファーさんはずっと先頭集団のところまで落ちてこなかったのです。
常に先頭を走り続け、誰もがみな「集団」が先頭だと思い込んでしまったのです。
誰が137km全力で走り続けると思うでしょう。
距離が長いので、飛ばすとき、中だるみ、ゴール争い、などその時その時の「流れ」があります。
キーゼンホファーさんは集団に飲まれなかったので、終始全力で先頭を走り続けました。
そして、ゴールするまでその存在を「集団」に気づかれなかったのです。
チームに所属しない
2つ目の常識外れは、キーゼンホファーさんはチームに所属していないことです。
普通自転車競技では、チームを組んでそれぞれの役割があります。
個人競技といえども国ごと、チームごとに集団を作り、風の抵抗が大きい先頭を順番に後退しながら体力を温存しつつ走るのが普通です。
そんな中、国ごと、チームごとに前に行く、後ろに行くと鍔迫り合い合いが行われます。
ところが、キーゼンホファーさんはそもそもチームに所属していないし、集団にも飲まれていない。
誰とペース合わせることなく、常に全力疾走。
マンガ弱虫ペダルには魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、そんな「誰とも協力しない選手」なんてさすがにいません。
現実だけではなく、マンガでも予想できなかった常識破りの走り方をしたのがキーゼンホファーさんでした。
コーチを付けない
オリンピックに出るような選手は肉体的、精神的に指導やサポートをしてくれる「コーチ」を付けるのが普通です。
どんな練習をどのくらいしたら、自分は速くなるのか分かるはずもありません。
選手経験者などのコーチに着くことで今の走りで良いのか、悪いのか、自分は良いペースで速くなっているのか、など知ることが出来るのです。
さらに、人間いつだって調子のいいときばかりではありません。
調子が悪いときは褒めてくれたり、逆に調子に乗っているときは厳しめにして引き締めてくれたり、自分だけでは管理できないメンタルまでを管理してくれるのがコーチです。
また、アスリートにとって、食事は重要なファクターの一つです。
必要な栄養素を摂り、レースに耐えられる強い身体を作っていかなければなりません。
ここには栄養学などの知識も当然必要です。
キーゼンホファーさんは、全て自分で管理されています。
レース後のインタビューで「私はアマチュア。栄養、器具、レースプランなど全てを自分で管理しないといけないが、それが誇りでもある」と答えています。
メカニックを付けない
キーゼンホファーさんは、メカニックも付けていません。
どの車種を選ぶかから始まり、全てのパーツを自分で選んでいます。
調子がいい、悪いなども自分で判断し、自分で調整するのです。
自転車の調整はいわば沼で、「もっといい調整があるのではないか」と思い始めたらきりがないのです。
スポンサーを付けない
ここは表に出ないかもしれませんが、非常に大きいです。
自転車メーカーや部品メーカーをスポンサーに付けないと言うことは、自転車の購入、部品の購入、全ての費用が自分にかかってきます。
さらに練習に集中しようとしても費用的に支えてくれる人がいない場合は、別に収益を上げながら練習をして、さらにレベルアップしないといけないのです。
プロは全ての時間を練習に費やすことが出来るのに対して、キーゼンホファーさんは、研究をしながら練習もしていました。
まとめ
オリンピックと言う世界一を決める舞台で1位を取った選手は、全てのセオリーを壊して、自分が考えたベストを尽くしました。
ここでお伝えしたかったのは、「有名な選手が○○をしているから真似する」と言うのはファンの心理としては良いのですが、必ずしもあなたを強くするわけではないと言うことです。
猛進するのではなく、ご自分を信じる事もまた強さにつながるのだと思われた今回の事象でした。